近頃熱を加えプレスし、居ながらにして裏打ちをお渡しできる機械が文具店、画材店が導入している。 |
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素人でも簡単にアイロンで仕上げる裏打ち用紙まで出回っているから私たち表具師にまで安易な作業を求めてくる。 |
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価格面でも到底太刀打ち出来るわけない。 |
それでも時代に沿うよう工夫してお客様の便宜を図っているが利益を出すため作品の状態を調べるという時間を節約せざるを得ない。 |
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しかも大至急の仕事であればなおの事である。 |
その場合失敗を防ぐ為にこちらから質問した事に正しく正直に話してくれればいいのだが問いに正確に答えてくれないばかりかまるで理解の無い人の多さに大変困る。 |
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例えば墨、墨は最近大変質が良くなっているので安心して作業にかかれるのだが稀に墨が散れるのが出てくる。 |
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それは、宿墨を使うからなのだ。 |
墨は煤と膠を固めて作るものだから紙や布に書いたものは一度乾燥してしまうと洗おうと水にぬらしても二度と落ちないばかりか滲むことはないのである。 |
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上手な尊敬に値する作品を目の前にするとそれが粗悪な墨汁や宿墨・古墨で書かれたものかなど疑うわけもない。 |
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この他こ胡粉や赤系の絵具、染料系の絵具も滲みやすい。 |
そうした色付きの絵具は事前に調べてから始めるが低価格から完璧ではない。 |
安易な時代であるからこそ自分の作品は自分でシッカリ、ガードして欲しい。 |
もしガードできないなのならば他人に対価を払わなければならない事を確り理解しなければならない。 |
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それが今の、これからの時代に生きぬく人々の責任なのであることを自覚して欲しい。 |
宿墨とは、墨汁でも擦り下ろした墨でもすぐ使うつもりで置くと季節や気温にもよるが数時間で墨の中の膠が腐ってしまう。 |
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寒い冬の場合では一晩でも置くと腐るのではなく古墨のように膠の効きが悪くなり滲みの原因になる。 |
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その場合はドーサ液を吹付けるか黒船屋で売られている専用のスプレー液を吹付けると良い。 |
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